message & diary

交通事故と画像所見―MRI・CT・レントゲンで何がわかるのか

2026.05.08
コラム

交通事故の後遺障害認定で重要な画像所見。

MRI・CT・レントゲンの違い、それぞれで分かること、撮影のタイミングと注意点を、旭川の交通事故被害者側専門弁護士が解説します。

初回相談無料。


交通事故の後遺障害等級認定において、画像所見は最も重要な客観的証拠の一つです。被害者が「痛い」「しびれる」と訴えていても、それだけでは等級認定を得ることは難しく、画像上の異常所見が認定の決め手になることが少なくありません。

しかし、「MRIを撮ったのに異常なしと言われた」「レントゲンでは何も映らないと言われた」という経験をされた方も多いと思います。画像検査には種類ごとに得意・不得意があり、ある検査で「異常なし」でも、別の検査で異常が見つかることがあります。

このコラムでは、交通事故の後遺障害認定という観点から、MRI・CT・レントゲンそれぞれの特徴、分かること、撮影にあたっての注意点を整理します。


Ⅰ レントゲン――最初に撮影される基本検査

レントゲン(X線検査)は、事故直後に最初に行われる画像検査です。撮影が簡便で、短時間で結果が分かるため、救急の場面で広く用いられます。

レントゲンで分かること

  • 骨折の有無
  • 脱臼の有無
  • 骨の配列の異常(脊椎のずれなど)
  • 骨の変形や加齢変性の有無

レントゲンの限界

レントゲンは主に「骨」を映す検査です。軟部組織(椎間板、靱帯、筋肉、神経、脊髄)はほとんど映りません。そのため、むちうちの原因となる椎間板ヘルニアや靱帯の損傷、高次脳機能障害の原因となる脳の損傷は、レントゲンでは検出できません。

「レントゲンで異常なし」は「骨折はない」という意味であり、「何も問題がない」という意味ではありません。この点は非常に重要です。


Ⅱ CT――骨の詳細と出血の確認に優れる

CT(コンピュータ断層撮影)は、X線を使って身体の断面画像を撮影する検査です。レントゲンより詳細な骨の画像が得られ、出血の有無も確認できるため、事故直後の救急医療で多用されます。

CTで分かること

  • レントゲンでは映りにくい微細な骨折
  • 脳出血、くも膜下出血(頭部外傷の場合)
  • 臓器の損傷
  • 骨の三次元的な構造(3D-CTの場合)

CTの限界

CTは骨と出血の描出には優れていますが、軟部組織の描出はMRIに劣ります。椎間板ヘルニア、靱帯損傷、脊髄損傷の程度、脳の微細な損傷(びまん性軸索損傷など)の評価には、MRIが必要です。

事故直後にCTを撮影して「脳に出血はない」と言われた場合でも、びまん性軸索損傷のような微細な損傷はCTでは映らないことがあります。後に高次脳機能障害の症状が現れた場合、MRIによる追加検査が必要になります。


Ⅲ MRI――軟部組織の描出に優れる最重要検査

MRI(磁気共鳴画像)は、磁場を使って身体の断面画像を撮影する検査です。放射線を使わないため被曝がなく、軟部組織の描出に優れています。交通事故の後遺障害認定において、最も重要な画像検査の一つです

MRIで分かること

  • 椎間板ヘルニア(むちうちの原因となる椎間板の突出・脱出)
  • 靱帯の損傷
  • 脊髄の損傷・圧迫
  • 脳の損傷(脳挫傷、びまん性軸索損傷など)
  • 半月板損傷、腱板損傷などの関節内の軟部組織損傷
  • 神経根の圧迫所見

MRIの撮影条件による違い

MRIは、撮影条件(磁場の強さ、撮影シーケンス、撮影方向)によって映り方が大きく変わります。この点は、後遺障害の立証において非常に重要です。

磁場の強さ(テスラ):MRI装置には1.5テスラと3テスラのものがあります。3テスラのほうが解像度が高く、微細な異常所見を検出しやすくなります。1.5テスラで「異常なし」とされた場合でも、3テスラで再撮影すると異常が確認されることがあります。

撮影シーケンス:T1強調画像、T2強調画像、STIR(脂肪抑制画像)など、撮影方法の種類によって映し出される情報が異なります。

撮影方向と範囲:矢状断(縦切り)、横断(輪切り)、冠状断(前後切り)のそれぞれで見える情報が異なります。また、撮影範囲が狭すぎると、損傷部位が含まれていない可能性もあります。


Ⅳ 「画像で異常なし」と言われたとき

「画像で異常がない」と医師から説明されたとき、被害者は落胆するかもしれません。しかし、以下の可能性を検討する価値があります。

可能性1:撮影条件が不適切だった

前述のとおり、MRIの磁場強度や撮影シーケンスによっては、異常が映らないことがあります。1.5テスラで撮影して「異常なし」の場合、3テスラでの再撮影を検討する余地があります。スライスが荒すぎたり、適正な脂肪抑制がされていないケースもあります。

可能性2:撮影時期が早すぎた、または遅すぎた

事故から長期間が経過すると、急性期の所見が消退してしまい、確認が難しくなることもあります(頭部外傷、脊髄損傷などの重症例で最も注意すべきことと考えます)。

逆に骨挫傷や靱帯損傷の一部は、事故直後よりも数日〜数週間後のほうが画像上に明瞭に映ることがあります。

可能性3:画像の読影に見落としがある

画像の読影(画像を見て異常を判断する作業)は、読影する医師の専門性と経験に依存します。整形外科医が脳のMRIを読影する場合と、放射線科専門医や脳神経外科医が読影する場合では、注目するポイントが異なることがあります。

異議申立ての場面では、別の専門医に画像の再読影を依頼し、見落とされていた所見が発見されるケースも存在します。

可能性4:画像に映らないタイプの損傷である

現在の画像技術をもってしても、すべての損傷が画像に映るわけではありません。たとえば、微細な神経線維の損傷は通常のMRIでは確認困難です。この場合、画像以外の検査(神経伝導速度検査、筋電図検査、神経心理学的検査など)で症状を裏づけることを検討します。



Ⅴ 後遺障害認定における画像所見の意味

画像所見が後遺障害の等級認定にどう影響するかを、具体的に整理します。

12級と14級の分かれ目

むちうち等の神経症状に関して、12級13号と14級9号の分かれ目として、画像上の他覚的所見の有無は大変重要な要素です。MRIで椎間板ヘルニアや神経根の圧迫が確認でき、かつその所見と症状が整合していれば12級が認定されやすくなります。画像上の明確な異常がない場合は、14級にとどまる傾向があります。

高次脳機能障害の認定

高次脳機能障害の等級認定では、「画像所見上の脳の器質的損傷」が認定要件の一つです。CTやMRIで脳挫傷、脳萎縮、びまん性軸索損傷の所見が確認されることが求められます。通常のMRIで確認が困難な場合、FLAIR画像、SWI(磁化率強調画像)、拡散テンソル画像(DTI)などの特殊なMRIシーケンスが有用な場合があります。

脊髄損傷の認定

脊髄損傷の等級認定では、MRIにおける脊髄の信号変化(脊髄内の異常信号)が重要な所見になります。脊髄の圧迫の程度、損傷の範囲と部位が、認定される等級に影響します。


Ⅵ 被害者が知っておくべきこと

画像検査に関して、被害者が知っておくべきポイントをまとめます。

第一に、「異常なし」は絶対ではないということです。検査の種類、撮影条件、読影する医師によって結論が変わることがあります。症状が残っているのに画像で異常がないと言われた場合、別の条件での再検査や、専門医への相談を検討する価値があります。

第二に、画像検査は適切なタイミングで受けることが重要です。事故直後だけでなく、症状固定に近い段階でも画像の再評価が必要な場合があります。

第三に、撮影された画像データは保存しておくことです。画像データ(CD-ROMやDVDで受け取れます)は、後遺障害の認定申請、異議申立て、訴訟のいずれにおいても必要になります。転院した場合でも、前医の画像データを引き継ぐことが重要です。

画像所見の有無や意味について判断に迷うことがあれば、弁護士にご相談ください。当事務所では、画像所見と後遺障害認定の関係について、具体的にお話しすることができます。

また、別記事でも書きましたが、アーティファクトにも要注意です。アーティファクトとは画像上に現れる誤った信号パターンのことで、「所見あり」と言われていたものが、訴訟を起こしたら「所見はアーティファクト(偽像)」として敗訴している例も、裁判例上存在します。

大石法律事務所は、交通事故の被害者側のみの受任を方針とする、旭川・道北地域の事務所です。保険会社との顧問関係はなく、被害者の立場からのみ、ご相談をお受けしています。





 

関連記事

 

交通事故の無料相談はこちら

弁護士費用について