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交通事故による高次脳機能障害―ご家族が気づくサインと、相談のタイミング

2026.04.14
コラム

交通事故による高次脳機能障害は、外見からはわかりにくい「見えない障害」です。

ご家族が気づくサイン、後遺障害等級認定の難しさ、相談すべきタイミングを、旭川の交通事故被害者側専門弁護士が解説します。

 

事故後、ご家族の様子がどこか以前と違う。

怒りっぽくなった、約束を何度も忘れる、仕事や学校に戻れない、段取りよく物事を進められなくなった――。

救命治療を終えて退院し、一見すると回復したように見えるご家族が、生活に戻ってから様々な異変を見せることがあります。


それは「高次脳機能障害」かもしれません。

この障害は、外見からはわかりにくいために「見えない障害」とも呼ばれます。ご本人は自覚がないことも多く、まわりのご家族が先に気づくケースが大半です。そして、この障害が交通事故による後遺障害として適正に認定されるかどうかで、被害者とご家族が受け取る賠償額は数千万円単位で変わります。


このコラムでは、ご家族が最初に気づくサイン、認定の難しさ、そしてどのタイミングで弁護士に相談すべきかを整理します。

Ⅰ ご家族が気づく「4つのサイン」

高次脳機能障害の症状は、大きく4つの領域に分けて理解されています。医学的にはさらに細かく分類されますが、ご家族が日常生活のなかで気づくポイントとしては、以下の4つを押さえておくと役立ちます。

① 記憶障害――「覚えられない」「何度も同じ話をする」

事故の後、新しいことを覚えられなくなった。約束を忘れる。少し前に話したことを繰り返す。自分が体験したことを思い出せない。日付や場所を認識できない時間帯がある――。

これらは、事故による脳の損傷が記憶を司る領域に影響を与えている可能性を示すサインです。認知症の症状と混同されることもありますが、交通事故後に現れた場合は、事故との因果関係を医学的に検討する必要があります。

② 注意障害――「集中が続かない」「ミスが増えた」

集中力が以前より明らかに落ちた。ぼんやりすることが増えた。複数のことを同時にできなくなった。テレビを観ていても内容が頭に入らない。仕事や家事でケアレスミスが増えた――。

こうした変化は、一見すると「疲れているだけ」「年齢のせい」として見過ごされがちです。しかし、事故前にはなかった変化として現れている場合、脳の注意機能の障害が疑われます。

③ 遂行機能障害――「段取りができない」「指示がないと動けない」

料理や掃除の手順を組み立てられなくなった。仕事で優先順位がつけられない。計画的に物事を進められない。指示がないと自分から動けない。複数の作業を並行して進められない――。

「遂行機能」とは、目的を持って計画を立て、それを実行する能力のことです。この機能の障害は、職場復帰の大きな障壁になります。

④ 社会的行動障害――「性格が変わった」「感情の起伏が激しい」

以前より怒りっぽくなった。感情の起伏が激しい。子どもっぽい行動が増えた。空気を読めなくなった。場違いな発言をする。意欲が低下して何もしたがらない。身だしなみを気にしなくなった――。

ご家族にとって、もっとも戸惑うのがこの領域の変化です。「人が変わってしまった」と感じるほどの性格変化として現れることがあり、家族関係・職場関係に深刻な影響を及ぼします。


Ⅱ なぜ「見えない障害」と呼ばれるのか

高次脳機能障害が厄介なのは、以下の3つの特徴があるからです。

第一に、外見からはわからないことです。手足の麻痺や骨折のような目に見える後遺症ではないため、職場や地域社会から「見た目は普通なのに、なぜできないのか」と理解されにくい状況に置かれます。

第二に、ご本人に自覚がないことが多いことです。自分の行動や能力の変化を認識できず、「自分は前と変わっていない」と主張することがあります。そのため、ご本人よりもご家族のほうが先に異変に気づくのが通常です。

第三に、事故直後には症状が顕在化しないことがあることです。救命治療を終えて退院し、しばらく経ってから、仕事や学校に復帰して初めて問題が浮き彫りになるケースが少なくありません。この時間差のために、事故との因果関係が争われることもあります。


Ⅲ 後遺障害等級認定が「最も難しい」類型のひとつ

交通事故の後遺障害には、自賠責保険の仕組みのなかで1級から14級までの等級があります。高次脳機能障害は、症状の重さに応じて1級・2級・3級・5級・7級・9級のいずれかに認定される可能性があります。

しかし、高次脳機能障害の等級認定は、後遺障害の中でも最も難しい類型のひとつです。その理由を3つ挙げます。

理由1:初診時の画像所見が軽微で「異常なし」とされやすい

受傷直後のCTやMRIで明確な異常が見つからない場合でも、その後に高次脳機能障害が顕在化することがあります。特にびまん性軸索損傷(DAI)と呼ばれる、脳全体に微細な損傷が広がるタイプの傷害は、通常のMRIでは映りにくく、初期段階で見落とされることがあります。

事故から一定期間が経過した時点で、高次脳機能評価、神経心理学的検査、場合によってはSPECT検査など、より詳細な検査を追加で行う必要性を判断し、適切な医療機関に依頼することが立証の鍵になります。

理由2:認定要件の「三本柱」をすべて満たす立証が必要

自賠責保険における高次脳機能障害の認定では、以下の3つの要件を医学的に立証する必要があります。

  • ① 事故後、一定時間以上の意識障害が存在したこと
  • ② 画像所見上、脳の器質的損傷が確認できること
  • ③ 症状が継続していること

このうち一つでも欠けると、等級認定を受けることができません。意識障害の記録が救急搬送時のカルテにどう残っているか、画像所見がどの時点で、どのような方法で評価されたか――これらを診療記録から丁寧に拾い上げる作業が必要になります。

理由3:「日常・職業生活状況報告」が認定を大きく左右する

等級認定の審査では、ご家族や職場からの「日常生活状況報告書」が極めて重要な判断材料になります。ご本人が自覚していない症状を、ご家族がどれだけ具体的に、医学的に意味のある観点から記述できるか――ここで認定される等級が大きく変わります。

ここは、被害者側が主体的に準備できる領域です。準備の有無・質によって、同じ症状でも認定等級に差が出ることは珍しくありません。


Ⅳ 相談すべきタイミングは「できるだけ早く」

「症状固定まで待ってから、弁護士に相談しよう」とお考えの方は少なくありません。しかし、高次脳機能障害のケースでは、できるだけ早い段階でのご相談をおすすめします。理由は以下のとおりです。

第一に、必要な医学的検査のタイミングを逃さないためです。高次脳機能評価や神経心理学的検査は、事故からの時期によって評価の意義が変わります。主治医との相談の上、適切な時期に適切な検査を実施することが、後の立証資料として重要な意味を持ちます。

第二に、日常生活状況の記録を、継続的に残しておくためです。事故直後からの変化を、ご家族が日記・メモ・写真などで記録しておくことは、後の認定申請で強力な資料になります。弁護士が早期に関与することで、何を、どう記録すべきかをお伝えできます。

第三に、保険会社との治療費・休業損害の交渉を適切に行うためです。高次脳機能障害のケースでは、治療期間が長期にわたることがあり、途中で保険会社から治療費の打ち切りを提案されることが少なくありません。早期のご相談により、こうした局面で適切に対応できます。


Ⅴ ご本人の同席は不要、ご家族からのご相談で構いません

高次脳機能障害のケースでは、ご本人の意思疎通が困難であったり、ご本人に病識(自分の症状に対する認識)がないために弁護士相談に消極的であったりすることが珍しくありません。

当事務所では、頭部外傷の患者様の場合、ご家族のみのご相談を歓迎しています。ご本人の同席は必要ありません。また、入院中・リハビリ中でご来所が難しい場合は、ご自宅や入院先病院への出張相談、電話・オンライン相談にも対応しています。

ご相談料は無料です。時間制限もございません。お手元に事故関連の資料(事故証明書、診断書、検査結果など)があれば、ご持参いただけるとお話がスムーズですが、なくても構いません。


Ⅵ 最後に

高次脳機能障害は、ご本人とご家族の人生を大きく変える後遺症です。そして、適正な賠償を受けられるかどうかが、今後の生活設計を左右します。

保険会社が提示する賠償額や等級は、必ずしも適正なものとは限りません。「被害が『ある』のに、それが『ない』ものとして扱われる」ことが、この領域では頻繁に起こります。

ご家族に「もしかして」と思う変化があれば、まずはご相談ください。お話を伺った上で、今すべきこと、急がなくてよいこと、弁護士にできること・できないことを、率直にお伝えします。

大石法律事務所は、交通事故の被害者側のみの受任を方針とする、旭川・道北地域の事務所です。保険会社との顧問関係はなく、被害者とそのご家族の立場からのみ、ご相談をお受けしています。

 



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