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保険会社から示談の提示を受けたら―確認すべきポイントと、よくある疑問|旭川の交通事故被害者側専門弁護士が解説

2026.04.22
コラム

加害者側保険会社から示談金の提示を受けた方へ。提示額が妥当かどうかの判断基準、保険会社基準と裁判基準の違い、確認すべきポイントを、交通事故の解決実績300件以上、弁護士経験17年の旭川の被害者側専門弁護士が解説します。初回相談無料。


交通事故の治療が終わり、後遺障害の等級が確定した後(あるいは後遺障害がない場合は治療終了後)、加害者側の保険会社から「示談金額の提示」が届きます。

書面に記載された金額を見て、「これは妥当なのだろうか」と感じる方は多くいらっしゃいます。結論から申し上げると、保険会社の提示額は、裁判で認められる水準より低いことが大半です

このコラムでは、保険会社からの示談提示を受けたときに確認すべきポイント、提示額が低くなる仕組み、そして被害者が取り得る対応を整理します。


Ⅰ なぜ保険会社の提示額は低いのか――3つの算定基準

交通事故の賠償額には、実は3つの算定基準が存在します。この仕組みを知らなければ、保険会社の提示が妥当かどうかを判断することはできません。

① 自賠責基準

自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)で定められた最低限の補償基準です。法律で定められた強制保険であり、被害者救済の「最低ライン」として機能します。金額は3つの基準のうち最も低くなります。

② 任意保険基準(保険会社基準)

加害者が加入する任意保険の保険会社が、社内で定めている算定基準です。各保険会社が独自に設定しており、公表されていません。自賠責基準よりは多少高いことが多いですが、裁判基準には遠く及びません。

③ 裁判基準(弁護士基準)

裁判所が判決で認定する場合に用いられる基準です。「赤い本」(公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部編『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準』)に基づく金額が目安になります。3つの基準のうち最も高く、被害者にとっては最も適正な水準です。

保険会社はどの基準で提示してくるか

保険会社からの示談提示は、通常、②の任意保険基準(またはそれに近い水準)で算定されています。保険会社は営利企業であり、支払額を抑えることが経営上の合理的行動です。③の裁判基準で最初から提示してくる保険会社は、まずありません。


つまり、保険会社の提示額と裁判基準の間には、ほぼ常に差があるということです。その差は、事案によって数十万円〜数千万円に及びます(当事務所の解決事例はこちら)。




Ⅱ 示談提示書で確認すべきポイント

保険会社からの示談提示書(損害賠償額計算書)を受け取ったら、以下の項目について確認してください。

① 入通院慰謝料(傷害慰謝料)

治療期間に応じて算定される慰謝料です。保険会社の提示では、自賠責基準または任意保険基準で計算されていることがほとんどです。

裁判基準では、入院期間と通院期間に応じた算定表(赤い本の別表Ⅰまたは別表Ⅱ)を用います。たとえば、通院6か月(実通院日数60日程度)のむちうちの場合、自賠責基準では約50万円前後の計算になることがありますが、裁判基準では89万円(別表Ⅱ)になります。

② 後遺障害慰謝料

後遺障害等級が認定されている場合に支払われる慰謝料です。等級ごとの金額は、自賠責基準と裁判基準で大きな差があります。

③ 逸失利益

後遺障害が認定されている場合に、将来の収入減少分として算定される項目です。計算の要素は「基礎収入」「労働能力喪失率」「喪失期間」の3つです。

保険会社の提示では、これらの要素のうち、特に「喪失期間」が短く設定されていることが多い傾向にあります。14級で3年、12級で5年といった短い期間で計算されている場合、裁判基準(14級で5年程度、12級で10年程度が目安)との乖離が大きくなります。

④ 休業損害

事故により仕事を休んだ場合の収入減少分です。会社員の場合は休業損害証明書に基づいて計算されますが、自営業者や主婦(主夫)の場合は算定方法に争いが生じやすい項目です。

特に主婦の休業損害は、保険会社の提示では自賠責基準の日額(1日あたり6,100円)で計算されていることがありますが、裁判基準では賃金センサスの女性平均年収を基礎として日額約1万円前後になります。

⑤ 過失割合

被害者側にも過失がある場合、その割合に応じて賠償額が減額されます。保険会社が提示する過失割合は、必ずしも適正とは限りません。事故態様、信号の状態、道路状況、速度などの具体的事情が、過失割合の判断に影響します。

「保険会社が言う過失割合は絶対ではない」ということは、知っておくべき重要なポイントです。

⑥ 既払額の控除

治療費、休業損害の内払い、自賠責保険の先行回収額などが「既払額」として差し引かれます。この控除が正確かどうかも確認が必要です。


Ⅲ 提示額を見て「よくわからない」と感じたら

示談提示書には多くの項目と数字が並んでおり、被害者が自分でその妥当性を判断することは容易ではありません。それぞれの項目が適正かどうかは、裁判基準との対照、過去の判例との比較、事故態様や治療経過の分析が必要で、専門的な判断を伴います。

「よくわからない」「これが妥当なのか判断できない」と感じること自体が、ごく自然な反応です。そして、「よくわからないまま署名・押印してしまう」ことが、最も避けるべきことです。

示談書に署名・押印すると、原則として後から金額を争うことはできなくなります。一度合意した示談をやり直すことは、極めて困難です。


Ⅳ 示談提示を受けた後に、被害者が取れる対応

対応1:弁護士に示談提示書を見せて相談する

最も推奨する対応です。示談提示書(損害賠償額計算書)を弁護士に見せていただければ、各項目が裁判基準と比べてどの程度低いか、増額の余地がどの程度あるかを、具体的にお伝えできます。

相談した結果、「この提示は妥当な水準です」とお伝えすることもあります。すべてのケースで増額できるわけではありませんが、保険会社の提示が裁判基準に達していないケースが大半である以上、確認する価値はあります。

対応2:保険会社に「検討する時間がほしい」と伝える

示談提示には、期限が設定されていることがあります。しかし、この期限は保険会社が設定したものであり、法的な強制力はありません。「弁護士に相談してから回答する」「もう少し検討したい」と伝えれば、対応期間を延ばすことは可能です。

焦って署名する必要は一切ありません。

対応3:弁護士に交渉を依頼する

弁護士が代理人として保険会社と交渉する場合、保険会社は裁判基準を意識した対応に切り替えることが多くなります。弁護士が介入した段階で提示額が増額されるケースは、実務上頻繁に見られます。

その理由は単純です。弁護士が介入すると、保険会社にとっては「この被害者は、納得しなければ訴訟を提起する可能性がある」ことを意味します。訴訟になれば裁判基準で判断されるため、保険会社としても裁判基準に近い水準で示談した方が合理的になるからです。


Ⅴ 弁護士費用と、増額のバランス

「弁護士に頼むと費用がかかるから、結局手取りは変わらないのでは」という疑問は、多くの方がお持ちです。これは合理的な疑問であり、正面からお答えします。

弁護士費用特約がある場合

ご自身の自動車保険に「弁護士費用特約」が付いている場合、弁護士費用の多く(上限300万円が一般的)が保険から支払われます。この場合、被害者ご自身の持ち出しはほぼ発生しません。

弁護士費用特約は、ご自身の保険だけでなく、ご家族の保険に付帯しているものが使える場合もあります。まずは保険証券を確認するか、保険会社に問い合わせてみてください。

弁護士費用特約がない場合

当事務所は完全成功報酬制を採用しており、着手金は無料です。報酬は、実際に増額できた金額に応じて精算するため、「弁護士に頼んだら赤字になった」という事態は原則として生じない設計になっています。

ただし、増額の見込みが小さく、弁護士費用が増額分を上回る可能性がある場合は、その旨をご依頼前にお伝えします。経済的合理性がないまま受任することはありません。


Ⅵ 最後に

保険会社からの示談提示は、被害者にとって「最終的な解決」です。署名・押印してしまえば、その金額で確定します。

保険会社の提示額が適正であるケースもあります。しかし、裁判基準との間に大きな差があるケースの方が、はるかに多いのが現実です。「もしかしたら、もっと受け取れるのではないか」と少しでも思ったら、署名する前に、一度ご相談ください。

相談の結果、「この提示は妥当です」と判断すれば、そのままお伝えします。「増額の余地があります」と判断すれば、その根拠と見通しを、具体的にご説明します。

大石法律事務所は、交通事故の被害者側のみの受任を方針とする、旭川・道北地域の事務所です。保険会社との顧問関係はなく、被害者の立場からのみ、ご相談をお受けしています。

 


 

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