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過失割合に納得できないとき―保険会社の提示は「絶対」ではない|旭川の交通事故被害者側専門弁護士が解説

2026.05.07
コラム

保険会社が提示する過失割合に納得できない方へ。

過失割合の決まり方、保険会社の提示が変わるケース、被害者が取れる手段を、交通事故の解決実績300件以上、弁護士経験17年の旭川の被害者側専門弁護士が解説します。

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交通事故の賠償交渉で、被害者が最も納得しにくい問題の一つが「過失割合」です。

「相手が飛び出してきたのに、こちらにも過失があると言われた」「赤信号で突っ込んできた相手の保険会社が、こちらにも2割の過失があると主張している」――こうした不満は、交通事故の相談で非常に多く寄せられます。

結論から言えば、保険会社が提示する過失割合は、法的な拘束力を持ちません。被害者が納得できなければ、争うことができます。このコラムでは、過失割合の仕組み、保険会社の提示が変わるケース、被害者が取り得る手段を整理します。


Ⅰ 過失割合とは何か

過失割合とは、交通事故の発生について、加害者と被害者それぞれにどの程度の責任(過失)があるかを数字で表したものです。たとえば「加害者80:被害者20」であれば、被害者にも事故の2割の責任があるとされます。

過失割合が賠償額に与える影響

過失割合は、賠償額に直接影響します。被害者の損害が1,000万円で過失割合が80:20の場合、被害者が受け取れる賠償額は800万円に減額されます(200万円が過失相殺されます)。

つまり、過失割合が10%変わるだけで、賠償額が100万円単位で変動することがあります。過失割合の問題は、金額に換算すれば極めて大きな問題です。

正しい後遺障害等級、正しい過失の双方がそろって、初めて妥当な賠償額になるので、その片側が抜けてしまうと、正当な補償を受けることはできません。


Ⅱ 過失割合はどう決まるのか

過失割合は、法律や行政機関が公式に「決定」するものではありません。警察も、過失割合を決める役割を担っていません。過失割合は、最終的には当事者間の交渉、または裁判所の判断によって決まります。

基本過失割合と修正要素

実務上、過失割合の出発点として用いられるのが、「別冊判例タイムズ39号」(東京地裁民事交通訴訟研究会編)に掲載されている事故類型別の基本過失割合です。

たとえば、「信号機のない交差点で、直進車と右折車が衝突した場合」「横断歩道外を横断中の歩行者と直進車が衝突した場合」など、事故の類型ごとに基本的な過失割合が示されています。

しかし、基本過失割合はあくまで出発点です。個々の事故の具体的事情に応じて、「修正要素」が加味されます。たとえば以下のような事情は、過失割合を修正する要素になります。

  • 一方が著しい速度超過をしていた
  • 一方が飲酒運転であった
  • 一方がわき見運転をしていた
  • 信号の色(青・黄・赤)
  • 道路の幅員差
  • 被害者が幼児・児童・高齢者であった
  • 横断歩道の有無、距離
  • 夜間であったかどうか

これらの修正要素によって、基本過失割合から増減を検討します。


Ⅲ 保険会社の過失割合が「正しくない」ことがある理由

保険会社が提示する過失割合は、多くの場合、上記の「別冊判例タイムズ39号」の基本過失割合をベースにしています。しかし、以下の理由から、保険会社の提示が実態と乖離することがあります。

理由1:加害者側の言い分を前提にしている

保険会社は、加害者の契約する保険会社です。事故状況の認識は、まず加害者からの報告に基づきます。加害者が「被害者が飛び出してきた」「相手も黄信号だった」と報告していれば、保険会社はその前提で過失割合を計算します。

被害者の言い分と加害者の言い分が食い違っている場合、保険会社の提示は加害者に有利な事実認定を前提にしている可能性があります。

理由2:修正要素の適用が不十分

保険会社は、基本過失割合をそのまま適用し、個別事案に応じた修正要素を十分に検討していないことがあります。たとえば、加害者の速度超過やわき見運転といった事情が、過失割合に反映されていない場合があります。

理由3:事故態様の調査が不十分

保険会社は、事故状況を当事者からの聞き取りと、警察の事故証明書のみで判断していることが多くあります。現場の見通し、道路の勾配、信号のサイクル、周囲の交通状況といった具体的事情は、実際に現場を確認しなければ分からないことがあります。


Ⅳ 過失割合を争うための資料

過失割合に納得できない場合、被害者の主張を裏づける資料を揃えることが重要です。以下は、過失割合を争う際に有力な資料の例です。

ドライブレコーダー映像

事故の瞬間を記録したドライブレコーダーの映像は、最も客観的で強力な証拠です。信号の色、車両の位置関係、速度、衝突の態様などが映像として記録されていれば、加害者の言い分と異なる事故状況を立証できる可能性があります。

被害者自身のドライブレコーダーだけでなく、加害者の車両や、事故を目撃した第三者の車両にドライブレコーダーが搭載されていた場合、その映像も重要な証拠になります。

防犯カメラ映像

事故現場周辺のコンビニエンスストア、ガソリンスタンド、商業施設、個人宅の防犯カメラに事故の様子が映っていることがあります。ただし、防犯カメラの映像は時間の経過とともに上書き・消去されてしまいます。早期の保全が不可欠です。

実況見分調書

警察が作成する実況見分調書には、事故現場の見取り図、車両の停止位置、ブレーキ痕の長さと位置、当事者の供述する衝突地点などが記録されています。刑事手続が終了した後に取り寄せることができます。

ただし、実況見分調書は加害者の指示説明に基づいて作成されることが多く、被害者の視点が十分に反映されていない場合があります。その内容を鵜呑みにするのではなく、他の客観的資料と照らし合わせて検討する必要があります。

事故現場の調査

事故現場に足を運び、道路の状況、見通し、信号のサイクル(青・黄・赤の秒数)、標識の位置、路面の状態などを確認・記録することは、過失割合を争う上で極めて重要です。

当事務所では、過失割合が争点になる事案について、代表弁護士が直接事故現場を調査することがあります。信号サイクルの分析、見通し距離の測定、道路状況の記録など、書面だけでは分からない事情を現場で確認することが、適正な過失割合の主張につながります。

工学鑑定

事故車両の損傷状況や衝突の物理的条件から、衝突速度、衝突角度、ブレーキの有無などを科学的に分析する「工学鑑定」を活用することがあります。「加害者はブレーキをかけていなかった」「衝突時の速度は制限速度を大幅に超えていた」といった事実を客観的に立証できれば、過失割合に大きな影響を与えます。


Ⅴ 過失割合を変えるために被害者が取れる手段

手段1:保険会社に対して根拠を求める

まず、保険会社に対して「この過失割合の根拠は何か」を確認してください。「別冊判例タイムズの何図(何番の類型)を適用したのか」「どの修正要素を考慮したのか」を聞くことで、保険会社の判断の前提が分かります。

手段2:弁護士に相談する

提示された過失割合が適正かどうかの判断は、事故の具体的事情と裁判例の分析が必要であり、専門的な判断を伴います。弁護士に事故の状況と保険会社の提示内容を伝えていただければ、過失割合の妥当性について見解をお伝えできます。

手段3:弁護士を通じた交渉・訴訟

弁護士が代理人として保険会社と交渉することで、過失割合が修正されるケースがあります。ドライブレコーダー映像、実況見分調書、現場調査の結果、工学鑑定の結果など、客観的資料に基づいて主張を行うことで、交渉力が格段に上がります。

交渉で解決しない場合は、訴訟(裁判)により裁判所の判断を求めることになります。裁判所は、保険会社の提示に拘束されず、双方の主張と証拠に基づいて独自に過失割合を判断します。


Ⅵ 最後に

過失割合は、被害者にとって感情的にも経済的にも大きな問題です。「自分は悪くないのに、過失があると言われた」という憤りは、当然の感情です。

当事務所で扱ったケースでも、100%の過失と言われていたケースで過失0になったり、過失100%と言われていたケースで過失4割まで下げることに成功して賠償額が1000万円近く増えたケースなどもあります。

保険会社の提示する過失割合は、あくまで保険会社の見解であり、法的に確定したものではありません。納得できない場合は、争う手段があります。

大石法律事務所は、交通事故の被害者側のみの受任を方針とする、旭川・道北地域の事務所です。過失割合が争点となる事案について、現場調査を含めた対応を行っています。

 



 

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