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交通死亡事故―ご遺族が知っておきたい初動と、刑事記録の意味|旭川の交通事故被害者側専門弁護士が解説

2026.04.15
コラム

ご家族を交通事故で亡くされたご遺族へ。

事故直後の初動、刑事手続の流れ、実況見分調書の意味、保険会社との接し方を、交通事故の解決実績300件以上・弁護士歴17年、旭川の被害者側専門弁護士が解説します。

早期の弁護士相談が「真相に近づく」鍵となります。


交通事故でご家族を失う――それは、ある日突然、何の前触れもなく訪れます。

悲しみのなかで、警察からの連絡、葬儀の準備、加害者側保険会社からの接触、検察庁での手続き、保険金の請求、損害賠償の交渉――立て続けに「やらなければならないこと」が押し寄せます。何から手をつければよいか分からないまま、加害者側のペースで物事が進んでいくことは、決して珍しくありません。

このコラムでは、ご遺族が知っておくべき事故直後の初動、刑事手続の流れ、そして「刑事記録」が損害賠償に持つ重要な意味を整理します。


Ⅰ 死亡事故の特殊性――被害者から「反論」ができないという現実

交通死亡事故が、人身事故と決定的に異なる点があります。それは、被害者ご本人から事故状況の説明ができないということです。

事故状況に関する情報は、加害者の供述、目撃者の証言、現場の物理的痕跡、ドライブレコーダーや防犯カメラの映像など、被害者以外の情報源から組み立てられます。そして、これらの情報を最初に集めるのは、捜査機関である警察です。

このとき、「加害者の言い分」が事故状況の前提として記録されていくことに注意が必要です。被害者は反論できません。ご遺族も、事故直後の捜査段階では捜査内容を知ることができません。気がついたときには、加害者寄りの事故状況が「事実」として固定されている、ということが起こり得ます。

この構造を知っておくことが、ご遺族にとって何よりも重要です。


Ⅱ 事故直後の初動――やっておくべきこと、急がなくてよいこと

事故直後のご遺族は、悲しみと混乱のなかで、いくつかの判断を求められます。すべてを完璧にこなす必要はありません。以下は、知っておくと役立つ目安です。

① 加害者側保険会社からの連絡への対応

事故から数日以内に、加害者の自動車保険会社から連絡が入ることが多いです。この時点で、保険会社は「過失割合」「賠償の概略」などについて話を始めることがあります。

この段階で、過失割合や金額に関する合意は絶対にしないでください。事故状況の調査が終わっておらず、刑事記録も開示されていない段階での提示は、加害者側に有利な内容になっている危険すらあります。「今は判断できる状態ではないので、後日改めて」と伝えるだけで全く構いません。

② 警察からの連絡への対応

警察からは、事故状況の説明、被害者の身元確認、所持品の返還などの連絡があります。捜査の進捗については、ご遺族から尋ねない限り、詳細を逐次教えてくれることはまずありません。

「捜査担当者の氏名・所属署・連絡先」を控えておくこと、「事件番号」を確認しておくことが、後の手続きで役立ちます。

③ ドライブレコーダー・防犯カメラ映像の確保

事故現場周辺の防犯カメラ映像、加害者・第三者車両のドライブレコーダー映像は、時間の経過とともに上書き・削除されてしまいます。多くの防犯カメラは1週間〜1か月で映像が消えます。

ご遺族が個別に近隣施設に映像保存を依頼することは難しいケースが多いですが、警察の捜査によって映像が保全されているかどうかは、後の重要な争点になります。

④ 葬儀・法要に関する記録の保存

葬儀費用などは、損害賠償請求の対象になるものが含まれます。領収書は必ず保存してください。葬儀社からの請求書、振込明細、現金支払いの記録、すべてが後で重要な資料になります。

急がなくてよいこと

逆に、急いでやらなくてよいこともあります。たとえば、加害者との示談、相続手続きの完了、自賠責保険への被害者請求などは、事故から数か月〜1年以上の検討期間を取って構いません。焦って判断する必要はありません。


Ⅲ 刑事手続の流れと、ご遺族の関わり方

死亡事故では、加害者に対して刑事手続(過失運転致死罪、危険運転致死罪など)が進行します。この刑事手続は、国家が加害者を処罰するための手続きであり、本来はご遺族のための手続きではありません。しかし、ご遺族にとっても重要な意味を持ちます。

刑事手続の流れ(概略)

事故発生から、おおむね以下の順で進みます。

  • ① 警察による捜査
  • ② 検察庁への送致
  • ③ 検察官による起訴・不起訴の判断
  • ④ 起訴された場合、刑事裁判
  • ⑤ 判決

刑事裁判に際し、ご遺族には「被害者参加制度」を利用して刑事裁判に関与する権利があります。法廷で意見を述べたり、加害者に質問したりすることが可能です。弁護士に手続きを依頼することで、心理的・実務的な負担を大幅に軽減できます。

刑事手続が「事故の真相を知る最大の機会」である理由

刑事手続は、ご遺族が事故の客観的な状況を知る、ほぼ唯一の機会です。捜査機関は、事故現場の実況見分、加害者の取調べ、目撃者の聴取、車両の鑑定など、ご遺族には到底できない規模で事故状況を調査します。


Ⅳ 刑事記録の取り寄せ――民事賠償における最重要資料

刑事手続が一段落した後(通常は判決確定後)、検察庁から「刑事記録」を取り寄せることができます。これは、損害賠償請求において最も重要な証拠資料になります。

刑事記録に含まれるもの

刑事記録には、たとえば以下のようなものが含まれます。

  • 実況見分調書(事故現場の見取り図、車両の損傷状況、目撃者の指示説明など)
  • 加害者の供述調書
  • 目撃者の供述調書
  • 事故車両の鑑定書(速度、ブレーキ痕の分析など)
  • 被害者の死亡に関する司法解剖の結果
  • ドライブレコーダー映像のデータ

これらの資料は、過失割合、事故態様、加害者の運転状況など、損害賠償の中核となる事実を立証するための一次資料です。

刑事記録の「読み方」――被害者の立場からの再検討が必要

注意すべきなのは、刑事記録は加害者を処罰するための捜査資料であり、被害者の立場から作成されたものではないという点です。

たとえば、実況見分調書は、加害者の指示説明に基づいて作成されることがあります。亡くなられた被害者の立場・視点が、十分に反映されていないことが珍しくありません。被害者の過失が実際よりも過大に表現されている、加害者に有利な状況だけが詳しく記載されている――こうした記載が紛れ込んでいないかを、ご遺族側の視点で精査する必要があります。

当事務所にご依頼いただいた事件でも、亡くなられた被害者の運転が「事故の起点となった」という加害者の言い分がそのまま事故状況として刑事記録が作成されていたケースがあります。事故現場を検分したところ、加害者の言い分は全く客観的事実に反することがわかりました。

この例のように、必要に応じて、独自の調査(現場の再検証、信号サイクルの分析、目撃者の追加聴取、専門機関による工学鑑定など)を行い、被害者の立場から事故状況を再構成することが、適正な賠償につながります。


Ⅴ 保険会社からの示談提示への対応

刑事手続が進行している間、加害者側の保険会社からは「示談提案」が出されることがあります。場合によっては、被害者の過失を理由に「示談提案すらしない」「連絡をしない」という対応がとられることもあります。

いずれの場合も、保険会社の提示や説明をそのまま受け入れる必要はありません。保険会社は加害者側の立場で動いており、ご遺族のために最善を尽くす存在ではありません。

提示された金額は、多くの場合、裁判をした場合に認められる金額より低額です。慰謝料、逸失利益、葬儀費用などの算定方法は、保険会社が用いる基準と裁判所が用いる基準で大きく異なります。提示を受けた段階で、一度は弁護士に内容を確認してもらうことをお勧めします。


Ⅵ ご遺族からのご相談――早期にご連絡ください

死亡事故のケースでは、事故直後からのご相談を強くお勧めします。理由は以下の通りです。

第一に、加害者側保険会社からの早期接触に対して、適切な対応をとるためです。事故直後の段階で不利な合意をしてしまうと、後から覆すことが困難になります。

第二に、刑事手続にどう関わるかを早期に検討するためです。被害者参加制度の利用、検察官との打ち合わせ、刑事裁判での意見陳述など、判断すべきことが多くあります。

第三に、ドライブレコーダー映像や防犯カメラ映像など、時間が経つと失われる証拠を確保するためです。

当事務所は、死亡事故案件について、ご遺族のみのご相談を歓迎しています。ご来所が難しい場合は、ご自宅への出張相談、電話・オンライン相談にも対応します。ご相談料は無料です。お手元に事故関連の資料(事故証明書、警察からの連絡メモ、加害者側保険会社からの書類など)があればご持参いただけるとお話がスムーズですが、なくても構いません。


Ⅶ 最後に

大切なご家族を交通事故で失われたご遺族の心情は、言葉では言い尽くせるものではありません。賠償金が、亡くなられた方の命を取り戻すものでないことも、私たち弁護士は十分に理解しています。

それでも、加害者と加害者側保険会社の言い分だけで事故が処理され、被害者の落ち度が過大に表現されたまま終わってしまうことがあってはならない――そう考えています。

適正な賠償を得ることは、亡くなられた方の名誉を守り、ご遺族の今後の生活を支える、現実的な意味を持ちます。「何かおかしい」「保険会社の説明に納得できない」と感じることがあれば、まずはご相談ください。

交通事故の解決実績300件以上・弁護士経験17年、被害者側専門の旭川の弁護士が、「交通死亡事故のご遺族がとるべき対応」について解説しました。

大石法律事務所は、交通事故の被害者側のみの受任を方針とする、旭川・道北地域の事務所です。保険会社との顧問関係はなく、被害者とそのご遺族の立場からのみ、ご相談をお受けしています。



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