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あなたの「人身傷害保険」、3,000万円で足りますか?―あまり知られていない自分を守る保険の話|旭川の交通事故被害者側専門弁護士が解説
対人・対物は無制限なのに、自分のケガを補償する人身傷害保険は3,000万円のまま?
交通事故の解決実績300件以上、弁護士経験17年の旭川の被害者側専門弁護士が、保険の2×2構造と人身傷害保険の重要性を解説します。
バイクの方は特にご注意を。
今日は、交通事故の賠償の話ではなく、あなた自身の保険の話をします。
弁護士として交通事故の相談を長年受けてきて、事故に遭ってから「こんなはずじゃなかった」と後悔する方を何人も見てきました。その後悔の多くは、相手方の問題ではなく、自分の保険の問題です。
少しだけ、お付き合いください。
Ⅰ 自動車保険の構造は「2×2」
自動車保険の補償を、シンプルに整理します。保険がカバーする対象は、「人」か「物」か、「相手」か「自分」か、の2軸で4つに分けられます。
多くの方は、左側の2つ(相手への補償)はきちんと設定しています。
対人賠償(相手の人):無制限。当然です。相手を死亡させたり重い後遺障害を負わせた場合、賠償額は数千万円〜数億円になります。無制限でなければ取り返しがつきません。
対物賠償(相手の物):無制限。これも当然です。高級車や店舗に突っ込んでしまえば、数千万円の賠償になることがあります。
車両保険(自分の物):加入していない方も多いですが、まあ、車が壊れても致命傷にはなりません。修理代が出せれば、あるいは買い替えができれば済む話です。
さて、ここで問題です。
残りの1つ――「自分の人」、つまり自分自身のケガや死亡を補償する保険は何でしょうか。補償の上限額はいくらに設定されていますか?
この質問に即答できる方は、ほとんどいません。
Ⅱ 答えは「人身傷害保険」
自分自身のケガや死亡を補償する保険は、「人身傷害保険」です。
人身傷害保険は、交通事故で自分がケガをしたり、死亡した場合に、過失割合に関係なく、契約した保険金額を上限として保険金が支払われる保険です。
多くの方が「3,000万円」
人身傷害保険は、多くの保険契約で「3,000万円」になっています。
ここで考えてみてください。
対人賠償を無制限にしているのは、「相手に大ケガをさせたら、賠償が数千万円〜数億円になるから」ですよね。では、自分が大ケガをしたら、いくら必要ですか?
脊髄損傷で四肢麻痺になれば、将来介護費だけで1億円を超えることがあります。高次脳機能障害で就労不能になれば、逸失利益だけで数千万円です。3,000万円で足りるでしょうか。
Ⅲ 「相手が払ってくれるから大丈夫」は本当か
「自分がケガをしたら、相手の対人賠償で払ってもらえるから大丈夫」と思うかもしれません。確かに、相手が任意保険に加入していて、相手に100%の過失があれば、その通りです。
しかし、実際にはそうならないケースが少なくありません。
ケース1:相手が無保険・任意保険未加入
任意保険の加入率は約88%(損害保険料率算出機構「自動車保険の概況」)です。つまり、約8台に1台は任意保険に入っていません。相手が無保険の場合、自賠責保険の限度額(傷害120万円、死亡3,000万円、後遺障害は等級に応じた上限)を超える損害は、相手個人に請求するしかありません。相手に資力がなければ、事実上回収不能です。
ケース2:自分にも過失がある
自分にも過失がある場合、相手の対人賠償から受け取れる賠償額は過失割合に応じて減額されます。自分の損害が1億円でも、自分の過失が3割であれば、相手から受け取れるのは7,000万円です。残りの3,000万円は、自分で負担することになります。
人身傷害保険は、この「自分の過失分」もカバーします。過失割合に関係なく、契約した保険金額の範囲で保険金が支払われます。
特に、北海道の雪道では、十分に注意していても対向車線に飛び出てしまう不幸な事故も発生しており、その場合には、自身が加害者として相手の保険から補償を受けることができないことになります。
ケース3:ひき逃げで相手が不明
相手が逃げてしまい、特定できない場合、相手の保険に請求することはできません。政府保障事業(自賠責保険の上限と同額)に請求できますが、それを超える損害は自分で負担することになります。
ケース4:単独事故・自損事故
ガードレールへの衝突、路面凍結によるスリップなど、相手がいない事故でも、自分は重傷を負うことがあります。この場合、相手の保険はそもそも存在しません。人身傷害保険がなければ、自分のケガに対する補償はゼロです。
Ⅳ バイクに乗る方は特に注意
バイク(二輪車)に乗る方に、特に強くお伝えしたいことがあります。
バイクの任意保険に人身傷害保険が付いていないケースが非常に多いのです。
バイクの任意保険は、自動車と比べて保険料が高い傾向にあり、保険料を抑えるために人身傷害保険を外している方が少なくありません。また、そもそもバイクの保険商品に人身傷害保険のオプションがない場合もあります。
バイクは自動車に比べて身体が露出しているため、事故時の負傷リスクが格段に高くなります。にもかかわらず、自分のケガに対する補償が手薄な状態で乗っている方が多い、という矛盾があります。
バイクに乗る方は、まず自分の保険契約を確認し、人身傷害保険が付いているか、付いているとして上限額がいくらかを確認してください。
Ⅴ 「車外事故特約」――歩いている家族を守る保険
人身傷害保険には、「車外事故特約」(搭乗中のみ担保の反対、つまり車に乗っていないときの事故も補償する特約)を付けられる場合があります。保険会社によっては「車外補償特約」「人身傷害の車外事故担保」などと呼ばれることもあります。
この特約が付いていると、歩行中や自転車に乗っているときに自動車事故の被害に遭った場合にも、人身傷害保険の補償を受けることができます。さらに重要なのは、契約者だけでなく、同居のご家族(配偶者、お子さん)にも適用されるのが一般的であるという点です。
なぜこの特約が重要なのか
実務で繰り返し目にするのが、「無保険の車にお子さんがはねられた」というケースです。
先ほど、任意保険の未加入率は約12%(約8台に1台)と書きました。そして、経験上の印象ですが、危険な運転をする人ほど、任意保険に加入していない、あるいは自賠責保険だけという傾向を感じます。通学路を猛スピードで走る車、信号無視をする車――そうした車の運転者が、きちんと任意保険に入っているかどうか。残念ながら、期待できないことが少なくありません。
お子さんが通学中に無保険の車にはねられた場合、相手の自賠責保険からは最大で120万円(傷害)、後遺障害は等級に応じた上限額しか出ません。それを超える損害は、相手個人に請求するしかありませんが、任意保険にすら入っていない相手に資力があるかどうかは推して知るべしです。
このとき、ご家族の自動車保険に人身傷害保険+車外事故特約が付いていれば、お子さんのケガに対して、自分の保険から補償を受けることができます。相手が無保険であっても、ひき逃げで相手が不明であっても、です。
確認してほしいこと
ご自身の保険証券で、人身傷害保険が「搭乗中のみ」になっていないかを確認してください。「搭乗中のみ」になっている場合、車外事故特約を追加できるかどうかを保険会社・代理店に問い合わせてみてください。
お子さんが自転車で通学している、歩いて習い事に通っている――そうしたご家庭にとって、この特約は「あって当然」の補償だと、弁護士の立場からは感じています。
Ⅵ 人身傷害保険の保険金額はいくらに設定すべきか
では、人身傷害保険の保険金額はいくらに設定すべきでしょうか。
これは一概には言えませんが、考え方の基準を示します。
対人賠償を「無制限」にしている理由を思い出してください。「相手に何があるか分からないから、無制限にしておく」のですよね。では、自分に何があるか分からないのは同じではないでしょうか。
保険料の負担が許容できるのであれば、人身傷害保険も「無制限」にするのが最も安心です。「無制限」が難しければ、1億円程度への引き上げを検討してください。
3,000万円から1億円に引き上げた場合の保険料の増額は、車種や年齢条件にもよりますが、年間数千円〜1万円程度であることが多いです。この差額で、万が一の場合に数千万円の補償が増えるのであれば、費用対効果は極めて高いと言えます。
Ⅶ 今すぐ確認してほしいこと
このコラムを読んだ後、一つだけお願いがあります。
ご自身の自動車保険(またはバイク保険)の証券を開いて、人身傷害保険の保険金額を確認してください。
3,000万円になっていたら、1億円や無制限への引き上げを保険会社・代理店に相談してみてください。
さらに、人身傷害保険が「搭乗中のみ」になっている場合は、車外での事故でも適用されるように相談してみてください。
保険料の差額は、おそらく想像より小さいはずです。
また、ご家族の保険も一緒に確認してください。特に、バイクに乗るお子さんがいる場合は、人身傷害保険の有無を必ず確認してください。
交通事故の弁護士として、事故に遭ってから「もっと保険をかけておけばよかった」という後悔を、何度も見てきました。保険は、事故の前にしか見直せません。
本コラムは、特定の保険商品や保険会社を推奨するものではありません。保険契約の詳細は、ご加入の保険会社・代理店にご確認ください。
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