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高次脳機能障害について(1)「交通事故で注意すべき高次脳機能障害とは?」
1 「高次脳機能障害とは?」
高次脳機能障害は、交通事故などによって頭部外傷を負った場合などに発生する脳機能の後遺障害(後遺症)です。
「高次脳機能」を簡単に言えば、車が迫って来るのを「見たら」「逃げる」というような「判断を下す」脳の働きです。
「見る」のも実際に「逃げる」筋肉を動かす命令を出すのも脳の働きですが(脳の一次的機能といいます)、その途中にある「判断を下す」部分が「高次脳機能」です。
逃げるという判断をする「高次脳機能」がなければ、車が迫って来るのが見えてもただ「見えているだけ」ということになりかねないのですから、「高次脳機能」がいかに重要な機能かが理解できます。
2 「どんな時に起きるの?」
高次脳機能障害は、
①脳の限定された部分が損傷を受けた場合(局在性脳損傷)や、
②脳の広い範囲の「軸索」が損傷した場合(びまん性軸索損傷)
に発生します。
①脳の限定された部分が損傷を受けた場合(局在性脳損傷)は、脳挫傷や脳内出血が急性期に認められるため、適切に画像検査がなされていれば見落とされることも少なく、また、事故との関係性も明らかです(逆に、受傷直後の画像が必須になります)。
事故との関係で特に注意すべきなのは、②脳の広い範囲の「軸索」が損傷した場合(びまん性軸索損傷)の場合です。びまん性軸索損傷による高次脳機能障害は、近年、頭部外傷後に特徴的なものとして問題となっています。この場合、急性期に画像所見が明らかではない場合もありますが、3ヶ月後に脳室が拡大するなどの変化が見られることがあります。
|
画像所見 |
意識障害 |
臨床症状 |
びまん性脳損傷 |
慢性期に脳萎縮・脳室拡大 |
一定レベル以上の意識障害 |
認知障害 記憶障害 行動障害 意欲低下 人格変化など |
局在性脳損傷 |
急性期に脳挫傷や脳内出血 |
意識障害がないこともある |
失語・記憶障害など損傷を受けた部位の脳機能が障害 |
3 「症状」
高次脳機能障害を発症すると、下記のような症状が現れることがあります。
性格の変化など一見してわからない症状があること、特に重症の場合に本人が異変を自覚できないことが病態の特徴であることから、交通事故の後遺障害認定手続きで見落とされることが多いと言われています。
① 記憶障害
「約束を忘れる」
「新しいことを覚えられない」
「物の置き場所を忘れる」
「病棟で訓練時間を忘れる」
② 注意機能障害
「気が散りやすく、飽きっぽい」
「話がまわりくどく、考えを相手に伝えられない」
「粘着性、しつこい、こだわる」
「複数の作業を行えない」
③ 遂行機能障害
「行動を計画したり、正確に遂行することができない」
「一つひとつ指示しなければ行動できない」
「自ら行動を開始しない」
「周囲を気にせず自分勝手にやってしまう」
「突然興奮したり怒り出す」
④ 社会的行動障害
「年齢よりも幼く人に頼りたがる」
「周囲の状況に無関心」
「発想が幼児的、自己中心的」
「感情や言動をコントロールできない」
「無気力」
「性格な異常行動・性的羞恥心の欠如」
「ふさぎこむ、気分がおちこむ」
「特に理由もなく不安を感じている」
4 注意点(早期に法的アドバイスを受けて下さい)
高次脳機能は円滑に生活や仕事を行う上で大変重要な機能ですから、被害者ご本人の受ける苦痛・不便は相当大きなものです。
それを支えるご家族の負担もとても大きいのが高次脳機能障害の特徴です。
せめて金銭的な補償を受け、安全な生活環境を整えることが必要です。
発見が遅れたり、最悪の場合発見がされなかったりすると、後遺障害としての補償が受けられなくなってしまう危険があります。
ご家族、ご自身が、頭部外傷を受けられたり、上記のような性格の変化を感じた場合は、医療のみならず法律的なアドバイスを早期に受けるようにして下さい。
大石法律事務所では、高次脳機能障害案件の解決実績が複数あります。
また、高次脳機能障害に関する専門医の研修にも参加しています。
旭川、道北地域で脳外傷でお困りの方は、一度大石法律事務所にご相談下さい。